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志麻の奇妙な冒険 58(モJOJOJO)様


 息遣いが聞こえる。
 そして等間隔で生まれる粘つくような水音も。
 動悸の高鳴りを感じる。
 触れた肌から体温が伝わってくる。
 ここにあるのはそれだけで、ここにいるのは二人だけ。
 羞恥心はあるだろうか。背徳感は?
 罪悪の意識すら今はもう感じない。
 心の中はすでにからっぽで、ただただ必死に肉欲に溺れる。
 痛みはすでに奥底に消えて、あるのは身を貫く快楽のみ。
 いま自分たちはしてはいけないことをしている。
 だからきっと後悔するだろう。するに決まっている。
 だが、そんなことはこうする前から分かっているのだ。

 片瀬志麻は音山光太の事が好きだった。
 きっかけは勉強会で始めてあった時かもしれないし、
 ビアンカの操縦の事で相談したときからかもしれない。
 気がつけば志麻は光太を目で追いかけるようになっていて、
 それを恥ずかしいと思いつつ、なんとなく幸せだった。
 片瀬志麻には親友もいた。
 スタイルが良くて、家事もこなせて、おまけに元気な女の子。
 アリサ・グレンノース。
 志麻に「しーぽん」というあだ名をつけたのも彼女で、
 光太との関係を一番応援してくれていたのも彼女だった。

 アリサがいなければ出来なかった事が沢山ある。
 アリサは志麻の支えであり、心の拠り所だった。
 けれどある時気づいてしまった。
 志麻の事を気にかけていたはずのアリサの目が、
 同じように光太を追いかけていることに。
 アリサ本人は全く気づいていないようだった。
 気づいていないから、何時もどおりに接してくる。
 何時もどおりに接してくるから、気づかないふりをしなくてはならない。
 不安だった。
 いつ気づくのか。
 いつまで気づかないのか。
 腹が立った。
 どうしていいのか分からず、その場で立ち尽くす事しか出来ない自分に。
 成績上位に躍り出ても、G・Mを成功させようとも、結局何一つ変わっていない自分に。
 そしてあの時見てしまった。
 偶然立ち寄ったインフィー格納庫での、光太とアリサによる情事。
 だからその時理解した。
 アリサ・グレンノースは音山光太の事が好きで、
 音山光太はアリサ・グレンノースの事が好きなのだと。

 志麻の乗るフジヤマは、今地球へと向かっていた。
 初めて宇宙へと旅立ったあの時を思い出すと、なんだか妙な気分だった。
「志麻ちゃん」
「…! え、なに?」
 不意に声をかけられた志麻は、うろたえ気味に反応する。
 声の先を見上げれば、そこには光太がいた。
「うん。少し顔色が悪そうだったから心配になって」
「…ありがと。大丈夫だから」
「そう?」
「あの」
「ん?」
「ちょっと、お話しない?」
「いいよ。じゃあ、隣いいかな」
「…うん」
 光太は隣の空席に腰を下ろした。
 さて、何を話そうか。
 話す体勢は出来たのだがなかなか切り出せず、少しの間沈黙が続いた。
 自分から誘ったものの、何を話そうとしたのか分からなくなった。
 大体なぜ話をしようなどと思ったのだろうか。
 やはりそれはあの事を意識しているからであって。
「音山くん」
 耐え切れなくなり、思わず出た言葉は。
「なに?」
「あ、その、寂しくない? アリサと離れちゃって」
「寂しいよ」
「…そ、そうですか」
「でも何ヶ月も会えなくなるわけじゃないしね。たまに電話とかもしようと思うし」
「…へぇ。アリサの方は、全然平気、
 とか言ってるけど、アレはアレで意外と寂しいとか思って…」
「ごめんね」
「え?」
「ちゃんと、言えなかったから」
「…どうして謝るの?」
「自分の気持ちに正直になった事については、後悔はしてないよ。
 でも、少し安易だったと思う。思慮が足りなかった」
「…私が、見ちゃったこと、言ってる…んだよね?」
「…うん」
 再度沈黙。滅茶苦茶に気まずい。
 大体、あれは思慮が足りないとかのレベルではないと思う。
 あの日、志麻は光太の姿を求めてインフィー格納庫に足を運んだ。
 しかしそこで見たのは告白と、情事。
 父親以外の異性の裸なんて見たことはなかったし、
 一番身近にいた親友があんな表情をして、あんな声を上げるところなんて、もってのほかだ。
 いま思い返してみると、とんでもないモノを見てしまったなと思い、少しだけ頬が熱くなる。
 あの時はそんな事も考えられず、ただ見ていることしか出来なかったのに。
 何も感じず、分けが分からない、そう思うだけだったのに。
 恥ずかしいと思えるのは、やはり時間が経ったからなのだろうか。
 横を向くと、光太が無表情で佇んでいる。
 志麻には光太がいま何を考えているかなど、全然分からない。
 けれど恋人であるアリサなら、この表情からなにか読み取れるのだろうか。
 そう考えると泣きそうになった。
 好きだったのではない。まだ多分、自分は好きなのだから。
 そこまで思って、自己嫌悪
 何もしなかったくせに、今更好きだとか思うな。
 志麻は一度ため息を吐いて、極めて笑顔で言った。
「アリサから聞いたでしょ? ビックリしたけど、別に…」
「それでも、ごめん」
 真剣に謝る光太の顔はやはり格好よく映る。
 志麻は唇をかみ締めた。

 驚いた。
 なんでも、志麻と光太目当ての追っかけが多すぎて正面からは帰れないのだという。
 いつの間にか有名人になってしまっていて複雑な心境だったが、
 それよりも自分たちの囮になったという晶とジョジョが心配だった。

「笙人がいるから」
 ケントのその言葉を聞くと何故か、大丈夫なんだな、という気がする。
「だって笙人先輩だもんね」
「そうだね」
 そんな会話をしながら裏口まで歩いていくと、志麻にとっては懐かしい存在がいた。
「…真人!?」
「ひさしぶり」
 真人は嬉しそうに言ってから、光太に会釈。
 それから志麻の姿をまじまじと見た。
「な…なによ?」
「姉ちゃん、綺麗になったな」
「ええ!?」
 そんな事を言われた。
 確かに、服を選ぶセンス等はアリサ直々の教えでレベルアップした感はある。
 今日も慣れないミニスカートなんかを履いてみた。
 だがそれに対して最初に反応したのが実の弟だとは、少しだけショックだ。
「少女を変えたのは、星の力か、はたまた恋の力か…」
 芝居がかった口調で言って、意地悪そうな目をした。
 もし本当にそうならうろたえるべきなのかもしれないけれど。
「…振られちゃった」
 志麻はそう言って笑った。
 真人もそんな答えは予想していなかったようで、驚いた顔で固まる。
 光太が息を呑むのも感じた。
 けれど、そんな事はもういいのだ。
「さ、行こ!」
 志麻はそう叫んで、少し早歩きで出口へと向かった。

 その後、光太の姉である陽子が迎えに来て、送ってもらうことにした。
 家へ来ないかと誘われたが、両親が待っているから、と答えて断った。
 両親が仕事で帰っていないことは事前の電話分かっていたのだが。
 陽子は真人がえらく気に入ったようで残念がっていたが、真人も志麻に口裏を合わせた。
 そして家の手前まで送ってもらい、光太達とは別れた。
 別れ際に光太が笑いかけてくれて、志麻もそれに対して笑顔を向けることが出来た。
 少しだけ安心した。
「やっと我が家だぁ」
 志麻はそう言って、懐かしの玄関で深呼吸した。
 とにかく久しぶりだ。何年も帰らなかったわけじゃないのに。
 当然この家には二人以外に誰もいない。
 お母さん達が帰ってくるまで時間が空いちゃったな。
 そして気がつく。
「…真人?」
 二人っきりになってから一言も喋らない。
 重力制御艇の中ではあれだけはしゃいでいたのに、
 今は逆に機嫌が悪そうな表情をしていた。
 志麻が不審に思っていると、一言。
「さっきの人に、振られたの?」
「!」
 真人はそう言って、志麻を見上げた。
「ど、どうして?」
「姉ちゃんの顔見てれば分かるよ」
「……」
「姉ちゃん、辛そうで見てられなかった」
「…だからあんなにはしゃいでたの?」
「あの人、なんだね」
 質問の答えになっていないが、志麻は驚いていた。
 昔から鋭いところはあったが、まさかこんな事を言われるとは思っていなかったから。
「…部屋、戻ろう?」
 志麻がそう言うと、真人は頷いて荷物を運んだ。

 そして志麻の部屋。
 真人は荷物を置くなり自分の部屋へ戻ってしまった。
 今度は一人きり。
 両親が帰ってくるまで寝てしまおうと思ったが、眠れない。
「…辛そうだった、か…」
 不意に思い出す真人の言葉。
 光太達の前では、終始笑顔で努めていた筈なのに。
 兄弟だから分かってしまったのだろうか。
 志麻はどうしても気になって、体を起こした。
 丁度向かい側にある真人の部屋のドアをノックする。
「…入っていいよ」
 了承を得た。ドアを開ける。
 自分の部屋以上に久しぶりな気がした。
 真人はベッドに腰掛け、天井を見上げている。
 そこで志麻は不思議な感覚に襲われた。
 ステルヴィアにいたときに光太達の部屋に入ったことがあり、
 その時の独特なにおいになんだか妙な興奮を覚えたものだったが、
 弟である真人の部屋からもそれと同じにおいがする。
 そういえば数ヶ月会わないうちに、少し大人っぽくなったかもしれない。
「暇だから」
 志麻は何も聞かれていないのにそう呟くと、同じようにベッドに座った。
「…さっきは、ごめん」
 真人が言って、
「いいよ」
 志麻が言った。
「どうして分かったの? 兄弟だから?」
「姉ちゃんの事、なんでも分かるよ。
 なんでもってのは少し言いすぎかもしれないけど」
「でも私は真人が考えてること、あんまり分からないよ」
「だって、僕と姉ちゃんは違うから」
「なにが違うのよ」
 なんだか馬鹿にされている気がした。
「…お互いのお互いに対しての認識、かな」
「なにそれ」
「姉ちゃんは、ステルヴィアに行ってもあんまり変わらないね」
「……」
 言って欲しくないことを言われてしまった。
「ごめんね。でも、変わらないでいてくれてよかった、思ってる」
 相変わらず天井を見上げたまま真人は言う。
 その姿がなんだか光太と重なって見えて、少しだけ胸が高鳴った。
 だから余計な事まで喋ってしまう。 「…振られたわけじゃないんだ」
「諦めた?」
「…選択しなかった、が正解かも」
「姉ちゃんらしいね」
「…優柔不断だから」
「でも」
 見上げていた顔を志麻に向ける真人。
 その真剣な表情は、またも志麻の胸を高鳴らせた。
 だからそれは多分油断で、けれど予期していないことは防ぎようもない。
 志麻は真人によって唇を奪われた。
「……」
 まるで時が止まったかのような。
 やがて、真人は唇を離した。
「そんな姉ちゃんが、好きなんだ」
「…え」
「え?」
「え、え…ええ!?」
「なんだよ」
「だって、私達、姉弟…」
「それでも好きなんだからしょうがないじゃん」
 開き直ったのか、ふざけた口調で真人は言った。
「わたし、初めてだったのに!」
「じゃあ、違う方の初めても奪っちゃおうかなぁ」
「え…?」
「え…?」
 お互いに相手の返答が予想外だったのか、言葉に詰まった。
「ほ、本気で言ってるの?」
「姉ちゃんこそ、なんでそこで嫌がらないんだよ」
「……」
 志麻は自分でも驚いていた。
 「違う方の初めて」とはつまりそういうことで。
 しかしそれはそれで想像してみても、不思議と嫌ではないのだ。
 困ったな。
 こういう場合の対処方を、志麻は知らない。
 一方真人はなにやら真剣に悩んでいる様子。
 しばらくするとまた志麻に向き直った。
「姉ちゃん」
「は…はい」
「わたくし、片瀬真人は、実の姉である片瀬志麻の事が、好きです」
「……」
 告白されてしまった。血の繋がった弟に。
 恥ずかしいのか、真人は赤い顔をしているが、それはきっと自分も同じだ。
 お互いに向き合ったまま、数十秒。
 志麻はやっとの事で状況判断が終了し、口を開いた。
「でも、その、私も、なんと言っていいものやら、左様にその…」
「いいんだよ。だから、選択して」
「…なにを?」
「受け入れるか、拒絶するか」
「え、あ…きゃ!」
 そのままベッドに押し倒された。
「ま、真人さん…!?」
「さっきも、キスなんかするつもりじゃなかった。
 今だって、こんな風にするつもりなんて全然なかったし。
 仲のいい姉弟でいられれば僕は満足だったから」
「…じゃあ、どうして?」
「姉ちゃんのあんな辛そうな顔、見ていたくないんだ」
「……」
「姉ちゃんに恋人が出来ること自体は、まだ諦められる。
 僕は姉ちゃんの笑っている顔が、大好きだから。
 けど姉ちゃんは選ぶのを怖がって何もしなかった。
 それなら、僕でもいいんだよね?」
 真人はそこまで言って、再度志麻に唇を寄せた。
 志麻は怖くなった。
 選らばなくてはならないことが。
 怖くて堪らなくなって、だから、
「ぁ…いや!」
 思わず真人を突き飛ばしてしまう。
 突き飛ばされた真人は体勢を崩し、尻餅をついた。
 志麻がそっと真人の顔をのぞき見てみると、
 少しだけ哀しそうな顔をして、背を向けてしまった。
「なんだ、ちゃんと選べるんじゃん」
「真人…」
 志麻はまた自己嫌悪に陥った。
 今のは選択をしたんじゃない。
 ただなんとなく怖かったからで、なんとなく拒絶してみせただけ。
 真人の気持ちを傷つけた。
 なんだかそれがひどく許せない。
 そろそろ、何かを選んでみようか。
 志麻はベッドから起き上がって、背を向けたままの真人を後ろから抱きしめた。
 何年か前にもふざけてこうした記憶があるが、今の真人はもう立派に男だった。
 それが志麻を少しドキドキさせて、妙な気分にさせる。
「姉ちゃん…?」
「いいよ」
「え?」
「して、いいよ」
「そんな…駄目だよ」
「選べって言ったの、真人だよ?」
「けど、僕たち、兄弟だよ?」
「なによ。あんな大胆な事しておいて」
「……いいの?」
「……いいの」
「……後悔するよ?」
「……後悔してみたいな」
 沈黙の中、見詰めあう。
 そして今度はお互いが同時に唇を合わせた。
 キスとは、こんなにも胸を締め付けるのか。
 やがて二人はさっきのようにベッドに座った。
「……」
「……」
 お互いに動けないし、喋らない。
 いざという時になるとどうしていいか分からなくなるのは、やはり姉弟共通らしい。
「じゃ、じゃあ、触るよ」
「え、うん」
 承諾を得た真人は、志麻の胸に触れた。
「ちょっと、そんないきなり…!」
「触ってもいいって言ったじゃん!」
 真人は慌てて手を離した。けれど何やら考える仕草をすると、にやけて言った。
「あまり成長の跡が見られませんね」
「……」
 それを聞いて肩を落とす志麻を片目に、真人は服を脱ぎ始める。
 志麻もそれにならって脱ぎ始めるが、やはり恥ずかしい。
 だがやがてお互いに生まれたままの姿になって、ベッドに横になった。
「十年ぶりくらいかな。姉ちゃんとお風呂に入った時以来、だよね」
「…そうだね」
 恥ずかしい。
 まともに真人の顔を見れない。
 両手で乳房や股間を覆っていたが、それらも真人によって剥がされてしまった。
 年頃になってからは同性の間でしか見せたことのなかった裸。
 それを、今は実の弟の前に晒している。
 突き刺さるような視線に、志麻の羞恥心は限界に達しようとしていた。
「…自信ないよぉ」
 横を向いて泣きそうになっている志麻。
 だがそれに対して真人は何も言わず、おもむろに姉の乳房に触れた。
 本人が言うように確かに威張れる程実ってはいないが、それでもその感触は素晴らしい。
 だが触れられている側の志麻には、そんな感動など知る由もなく、ただ羞恥に耐えていた。
「…どう?」
 突然そんな事を尋ねられても。
 志麻が返答に困っていると、真人は触っていた乳房に口付けた。
「ん…」
 少しだけ声が漏れて、目がきつく閉じられる。
 真人はそれを見逃さず、乳首を口に含み、舐めた。
「ぁ…ふぁ…」
 体の芯が熱くなる。勝手に声が漏れていく。
 初めての感覚に、志麻は少しだけ怯える。
「かわいいよ…」
 真人の声が体全体に響く。
 だが志麻は堪えきれなくなって、真人を抱きしめた。
「姉ちゃん?」
「ちょっとだけ、待って」
「…うん」
 呼吸を整える。けれど心臓の音は一向に収まらない。
「…ぁ」
 ふと目線をずらすと、真人の性器が目に入った。
 自己主張するその部分は、思っていたより小さくて可愛い感じがする。
 きちんと手入れはしてあるようで、綺麗だった。
 体を起こす。そして、志麻はおずおずとその部分に手を伸ばした。
「あ、姉ちゃん…」
 触れる。熱い。血液の脈動が伝わってくる。
 少しだけ力を込めて握ると、真人は体を震わせた。
「ご、ごめん、痛かった?」
「そうじゃ…なくて。その…」
 真人は赤い顔を更に赤く染めて、口を濁らせた。
「…気持ちいいの?」
「…ん」
「…そっか」
 なんとなく嬉しい気分になって、志麻は握ったり放したりを繰り返した。
 たまになんとなく擦ってみたりする。
 その度に真人の体は震えた。
 しばらくそれを繰り返すと、真人の反応が変わってくる。
 額に汗が浮かんで、何かに耐えているような。

 そのうちに握っていた性器もビクビクと震えだした。
「く、姉ちゃん…」
「え…? あ」
 そして突然の暴発。射精。
 吐き出された体液は勢いよく飛び上がり、志麻の手や近づけていた顔に付着した。
 生臭い匂い。けれどあまり嫌な感じはしない。
 それでも真人は謝りながら、近くあったティッシュで志麻に付着した体液をふき取った。
 終わった後も気まずい顔で志麻の顔をうかがっている。
 志麻にはそれが可笑しくて、少しだけ笑った。
「笑わないでよ」
「ごめん」
 少し緊張もほぐれた。
 志麻は深呼吸をして再度ベッドに横になろうとしたが、そこで気がつく。
 足を動かす度に股間に感じる違和感。少しだけ触れてみる。
「…うそ」
 信じられないほどに濡れていた。
 今まで自慰の経験もない志麻は一瞬、漏らしてしまったのかと思った。
 だがそんな覚えはないし、それにしてはこの液体は妙に粘ついている。
「すごいね…」
 真人が言った。その言葉で志麻の頭に血が上った。
 混乱した頭で志麻がひねり出した言葉は。
「真人…横になって」
 言われた真人は不可解な顔をしてベッドに横たわった。
 先ほど射精しても尚硬度を失わない性器が振り子のように揺れる。
 志麻は少し躊躇すると、意を決して真人の体を跨いだ。
 こんな恥ずかしいこと、早く終わらせたい。
「え、姉ちゃん…!」
「…もう大丈夫だよね」
 こんなに濡れてるんだから。
 志麻は丁度股下に来た真人の性器を掴むと、腰を近づけていった。

 そして、触れる。
 お互いの体の中で最も敏感な部分同士が、ついに触れる。
 血の繋がった実の姉弟での性行為。
 タブーとされている行為。
 正しくないことは分かっている。
 でも、今そんなことはどうでもいい。
「それじゃあ、いくよ」
「……」
 真人は答えない。ただ、その瞬間を待っている。
 志麻は真人のその表情から、恐怖と期待を読み取ることができた。
「んん…」
 腰をゆっくりと落とす。
 入ってくる。弟の性器が進入してくる。
 自分でもあまり触れた事の無い部分に突き刺さる。押し広げられる。
 やがて、志麻の太ももと真人の太ももが密着した。つまり。
「はいっ…たぁ…」
 止めていた息を吐く志麻。対して真人は、少し涙ぐんでいた。
「なに泣いてんのよ」
「泣いてないよ!」
 目を拭いつつ言っても説得力は無い。
 その姿に志麻は笑ったが、一方で戸惑ってもいた。
 受け入れている部分が疼いて、もどかしいのだ。
 破瓜の痛みはある。だが噂に聞いていたほど、激しい痛みではない。
 それは真人の性器がそれほど大きいわけではない所為なのだが、
 今の志麻にはそんなことは分からなかった。
 だから戸惑う。
 どうしていいのか分からない。
「姉ちゃん、痛くない?」
「…あんまり」
「それじゃあ、気持ち良い?」
「……わかんない」
「動いて、みて」
 だからどうやって動けばいいのか。
 とりあえず、感じるままにしてみようか。
 志麻はベッドに手をついて、適当に腰を上下させてみた。
「あ…!」
 電撃のような感覚に驚いて動きを止める。
 けど体がその感覚を求めて、すぐに動きを再開した。
 すると強すぎる感覚が怖くなって止まる。
 少し経ってからまたおずおず動き出して、止まる。
 ひたすらそれの反復だった。
「動いてすぐに止まってたら、何時までたっても終わらないよ…」
 指摘されてしまった。
「だって、怖いんだもん」
「じゃあ姉ちゃん下になってよ」
「やだよぉ」
「だったらもっとちゃんとして」
「むー」
「赤ちゃん口調はいいから」
「…ん…」
 雑談で気が楽になり、志麻は動きを再開した。
 腰を上げてギリギリまで抜く。
 さっきまではここで一度止まっていたが、今度はそのまま入れてみる。
「ふぁ、ああ…!」
 体を貫かれる感覚。もう一度。
「んあ、あ、あぁ…」
 快感の量が大きすぎて口が戦慄く。
 それでも必死に動いていたが、ついにヒザが震えて動けなくなってしまった。
「ん…ふぅ…」
「もう駄目?」
「…うん」
「僕が上になっていい?」
「…うん」
 志麻はなんとか自分の中から性器を抜き去ると、そのままベッドに倒れこんだ。

 今度は真人が志麻の上にのしかかる。
 足を広げ、真人はすぐに志麻の中へと入り込んだ。
「ぁぁ…」
 両者ともに息が漏れる。
 しかし間を置かずに真人は動き出し、志麻がそれを静止した。
「だ、だめ。怖いよ」
「………ごめん」
 一言謝るだけで、真人は構わず出し入れを開始する。
「いやっいや! だめぇ…!」
 それでも真人は止まらない。
 志麻の目じりから涙が零れ落ちた。
 怖い。壊れてしまう。
 志麻は息を荒げに腰を動かす弟の体を思い切り抱きしめ、必死に耐えようとした。
 お願い。早く終わって。
 そう思うものの、真人はなかなか果てない。
 それどころか、志麻の方が先に終わってしまいそうだった。
 強すぎる刺激。初めての感覚。
 しかもそれを今自分に与えているのは、実の弟なのだ。
 背徳による快感。
 それがさっきまで処女であった志麻を高みへと押し上げようとしていた。
「ぁっぁっぁっ…!」
「姉ちゃん…!」
 真人の体が震え始める。終わりの前兆。
 しかしそれは志麻も同様だった。
「ぁっ、だめ、ぁっぁっあっあぁ…!!」
「ん…!」
 片瀬姉弟は、寸分の狂いもなく同時に果てた。

「乱暴者め」
「…ごめん。我慢できなかったんだよ」

「どうするの? 赤ちゃんできちゃうかも」
「それは姉ちゃんが僕のこと離さなかったからだろ」
「……」
「…本当に出来たら、どうしよう」
「…うん」
「大変だよね。ごめん。ごめんなさい」
「こら。いいよ。大丈夫。後で薬局行くから」
「……」
「? どうしたの…あ」
「ち、違う…」
「二回も出したのに。すごいね」
「あ…姉ちゃん」
「もう一回…する?」
「ん…」

 二人が何度目かの行為を終えた後、両親が帰宅した。
 なんだかドギマギしてしまって変な目で見られてしまった。
 その後母親の千秋が大急ぎで作った夕食に手をつけないうちに、
 ステルヴィアから非常召集がかかる。
 なんでも、ウルティマが襲撃を受けているというのだ。
 それで何故自分が召集されるのか理由が分からなかったが、
 ウルティマと聞いて、志麻はりんなの事が気がかりだった。

「それじゃあ、行ってきます」
 せっかく帰ってきた我が家を後にするのは名残惜しかったが、
 それでも志麻は笑顔でそう言えた。
 そこで思い出す。
 そういえば薬局に寄らなければならないのだった。
 どうしようか。コンビニでもいいか。
 志麻が迷っていると、
「いってらっしゃい」
 真人がそう言った。
「うん」
 志麻はそう答えて、
 コンビニでいいや、と思った。

                 志麻の奇妙な冒険・完


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